残業時間とメンタルヘルスの関係
まずは、実際に残業時間とメンタルヘルスがどのように関係しているか見ていきましょう。
残業の増加がメンタル不調を引き起こす
残業時間が増加すると睡眠不足になりやすく、結果として体調不良やメンタル不調が引き起こされると考えられています。これは労働時間が長くなれば、必然的にそれ以外に使える時間が減少するためです。
文化的で健康的な生活を送るには、睡眠時間以外に食事や趣味の時間も必要です。自分の時間を持とうとすれば、徐々に睡眠時間は削られていきます。つまり、残業をすればするほど睡眠時間が減るため、十分に疲労を回復できなくなります。睡眠不足が続けば集中力や判断力が低下し、業務のミスも増えるでしょう。メンタルに直結している脳が不調になるだけでなく、仕事のミスによるストレスも増加します。このような要因により、残業が増えることでメンタルの不調を引き起こします。
メンタル不調が深刻な結果をもたらすことも
心理的負担が重く、メンタルが不調の状態で働き続けることで、さらに状態は悪化していくでしょう。
結果としてうつ病などの精神疾患や、最悪のケースだと従業員の自殺にまで発展してしまいます。このような結果になれば、企業は責任を逃れることはできません。実際に長時間の残業による超過労働が原因で自殺が発生する件数は増えています。
取り返しのつかない結果を招く前に、企業は従業員の心の健康を守るための適切な対策を実施する必要があります。
超過労働によるメンタル不調への対策
長時間の残業によるメンタル不調の発生を防ぐためにはどんなことができるでしょうか。具体的な対策を見ていきましょう。
時間外勤務時間のチェック
まずは不調の原因となる時間外勤務時間を把握できるようにしなければなりません。精神疾患になる以前の半年以内に、1ヶ月でも長時間労働の実績があれば、それが不調の原因と認められます。長時間労働の基準は、労働基準法で定められている週40時間を超える時間外勤務の時間で判断されます。
メンタルの不調の原因となる長時間労働の基準は以下のとおりです。
- ・月45時間を超える残業
- 労働基準法違反になる時間であり、健康への配慮が必要です。
- ・月80時間を超える残業
- 面接指導を実施するように努める必要があります。医師から必要な処置を聞き、実施しなければならないと判断した場合は、事業者がその内容を適切に行います。
- ・月100時間を超える残業
- 該当する全ての労働者は、医師による面接指導を実施しなければなりません。
このように、時間外の労働時間を従業員ごとに算出し、誰が健康面に不調が出ているか確認してください。
面談等の実施
時間外勤務時間の確認を行い、一定時間以上の残業を行っている従業員には面談を実施する必要があります。
特に残業時間が80時間から100時間を超える従業員に対しては、産業医の面談を受けさせなければなりません。基本的に面接指導の対象は、以下のとおりです。
- 医師に高いストレスを感じていると判断された者
- 医師との面接指導を希望する者
面談・面接指導は5分から20分ほどで、診断結果によって「通常勤務可」「就業制限」「要休業」と判断されます。しかし通常勤務可と判断されても、プレッシャーを多く感じている場合は精神疾患の予備軍になるため注意が必要です。
産業医の活用
産業医は労働者を診察する社外の専門家という立場であり、必要な勧告ができる権利を持っています。したがって、企業は産業医の勧告を尊重しなければならない義務があるため、言う事に逆らえません。例えば面談の結果でドクターストップが出た場合、企業は従う必要があります。
残業時間が長い従業員の面談を行う以外にも、従業員の就業制限に関するアドバイスも行っています。社内の体制を見直し、従業員のメンタルを良好に保つためにも、産業医監修のもと人事ルールを作ることが大切です。
4つのケアの体制づくり
従業員のメンタルの不調を改善し良好に保つためには、適切なケアを行う必要があります。メンタルヘルスケアには大きく分けて4種類のケアがあります。
- ・セルフケア
- 自分自身のストレスに気づき、自発的に自身をケアすること。
- ・ラインケア
- 管理監督者が部下の健康状態を適切に管理し、ケアすること。
- ・社内の産業保健スタッフケア
- 社内ルールの制定や、セルフケア・ラインケアを実施できる環境を整える。
- ・社外の専門スタッフケア
- 産業医などの社外の専門家よるケアのこと。
この4つのケアを体制化・ルール化し、遂行することで社内のメンタルヘルスケアの推進に繋がります。
メンタルヘルスケア実施のポイント
最後にメンタルヘルスケアを実施し、成功させるために必要なポイントを見ていきましょう。
会社全体でのサポート
メンタルの不調に関する問題は、現在でも上司の理解を得られないことが多いです。
個人のメンタルヘルスケアの重要度に関する認識が異なるため、1つの組織が改善に努めても効果は出にくいです。したがって、会社・組織全体がメンタルヘルスケアに理解を示し取り組まなければなりません。
そこで、経営者や役員などの上層部が積極的にストレスケアに取り組むことで、会社全体へ考えが広まります。このように会社が一丸となってメンタルヘルスケアに取り組むことが重要です。
社内での実施が難しいものは外部委託
メンタルヘルスケアは企業にとって重要度は高いですが、専門的な知識や資格が必要になります。例えば、ストレスチェックでも専門家の手を借りた方が確実です。他にも面接指導や労働環境の改善策の検討といった内容は、自社での対応が難しいです。
このような場合は外部委託を活用してください。外部に委託すると費用が発生しますが、メンタルヘルスケア体制を最適化できるメリットがあります。
残業時間とメンタルヘルスの関係に注意し労働環境を整えよう
残業時間が長くなればメンタル不調を引き起こす可能性が高くなるため、適切な対応が求められます。まずは労働者の時間外勤務時間をチェックしましょう。月40時間超、月80時間超、月100時間超といった時間を基準に面談などを実施しなければなりません。産業医を有効活用するのもおすすめです。体制を見直すのは大きな負荷がかかるため、会社が一丸となって取り組んでください。残業時間に注意して労働環境を整えましょう。