「マネジメントの父」と呼ばれるドラッカー((Peter Ferdinand Drucker、ペーター・フェルディナント・ドルッカー 、1909年11月19日 - 2005年11月11日)は、読者の皆様も何かを読まれたことがある、あるいは少なくとも“もしドラ”などで聞いたことがある経営学者でしょう。
ドラッカーは、その一見シンプルな語り口に内在する深遠なメッセージから、「状況に応じて、年齢によって、ドラッカーに触れ直す度に、常に新たな気付きがある」ということを、彼の論に触れた人たちは異口同音に口にします。(ドラッカーファンは“ドラッカリアン”と呼ばれています。著名な経営者では、ファーストリテイリング・柳井正さん、ダイエー創業者の故・中内功さん、リクルート創業者の故・江副浩正さん、ジェイアイエヌ社長の田中仁さんなどが挙げられます。)
そのドラッカーの問い、として最も有名なものが、「5つの質問」です。
「「最も大切な5つの質問」とは、今行っていること、行っている理由、行うべきことを知るための経営ツールである。それは、「われわれのミッションは何か?」「われわれの顧客は誰か?」「顧客にとっての価値は何か?」「われわれにとっての成果は何か?」「われわれの計画は何か?」という5つの問いからなる経営ツールである。すべてが行動につながる。何ごとも行動が伴わなければ意味はない」(『経営者に贈る5つの質問』2008年)
初めて聞いたときに、その本質性に感動する人も多いですが、一方で、あまりにシンプルなために、何か肩すかしをくらったように感じる人も少なくありません。
何を隠そう、僕も、その一人でした。「何だ、だいたい分かっていることだな」。
しかし、あるとき、この問いに真正面から向き合うことになった折に、その中の幾つかの項目(僕の場合は「われわれの顧客は誰か?」「顧客にとっての価値は何か?」「われわれにとっての成果は何か?」でした)について、本当に理解できているのだろうかという猛烈な不安に襲われることになったのです。かれこれ、10年以上前のことです。
以来、幾度かの自習ワークにより、また、専門講師による手ほどきにより(最近は、経営者JPのパートナーとして専門講義を頂いているトップマネジメント社・山下淳一郎先生によるワークショップです)、毎回、新たな気付きと発見があり、上書き更新を続けています。
当社主催講座の参加者の皆様も、ワークのビフォー・アフターで、「5つの質問」に対するイメージ、その本質的な意味合い、自身がこれに対する回答を持てているか否かに対して、全員180度異なる結果となり、「そうだったのか!」と衝撃を受けられるのですから、面白いものです。
「シンプルな質問ほど答えにくい。なぜか。質問がシンプルならば答えもシンプルなはずである。しかし、そうではない。質問がシンプルであるほど正面から答えなければならない。時には痛みを伴う自己評価が必要となる。私たちは、いかなる組織にあろうと、ドラッカーが問いかける5つのシンプルな質問に答えないかぎり、顧客、組織、自らに対し、やがて外をなすことになる。」── フランシス・ヘッセルバイン(リーダー・トゥー・リーダー財団創立者)
「「5つの質問」がもたらすものは、行動のための計画である。計画とは明日決定するものではない。決定することのできるのは、つねに今日である。明日のための目標は必要である。しかし、問題は明日何をするかではない。明日成果を得るために、今日何をするかである。」(『経営者に贈る5つの質問』2008年)
「5つの質問」は、お題目でもないし、抽象的な原則論でもありません。それは、【行動につながる経営ツール】です。
「何ごとにも満足することなく、すべてを見直していかなければならない。だが、最も見直しが求められるのは、成功しているときである。下向きに転じてからでは遅い。明日の社会をつくっていくのは、あなたの組織である。そこでは全員がリーダーである。ミッションとリーダーシップは、読むもの、聞くものではない。行うものである。「5つの質問」は、知識と意図を行動に変える。しかも、来年ではなく、明日の朝にはもう変えている。」(『経営者に贈る5つの質問』2008年)
【行動につながる経営ツール】を手にした上司は最強です。そして、それがなによりも、ドラッカー究極の質問、
「(私たちは)何をもって憶えられたいか」
に対する答えを私たちにもたらしてくれることになります。
皆さんも、ぜひ、お手すきの折に、「5つの質問」に取り組んでみてください。間違いなく、一生ものの宝になりますので。
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