実践マネジメント心理学
こんにちは、株式会社 経営者JPの井上和幸です。 このコーナーでは、マネジャーの皆様が日々のマネジメントで役立てて頂ける実践的な心理学の理論と活用法、「科学的に上手くやる、人・組織の方法論」、をご紹介してまいります。 第26回は、「質問説得話法」に光を当ててみたいと思います。
先日、当社内の研修で、拙書『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ・刊)を使ってのディスカッションを行いました。そこで社員たちから最も多く出た質問が、「質問の使い方」でした。
質問だけで話を進めることが本当に出来るのだろうか、というのは、読者の皆さんも同じくお感じになられる疑問かもしれませんので、今回、ちょっと補足解説をしてみたいと思います。
質問がうまい人と話していると、会話がいつまでも途切れることがありませんよね。逆に、質問下手な人が相手だと、話題があらぬ方向へずれていったり、返答に困って沈黙が続いたり、会話が途切れてしまったりと、話をするほどにストレスをため込むことになります。
では、よい質問とは、いったいどんな質問でしょうか。人によってその答えはさまざまかと思いますが、例えば明治大学教授・コメンテータの斎藤孝さんによれば、よい質問とは「具体的かつ本質的」な質問のこと。逆に、ダメな質問とは「抽象的かつ些末」な質問のことだといいます。
私はというと、「質問説得話法」を駆使できる人には感心してしまいます。『ずるいマネジメント』でも、概ねこれを基盤としたコミュニケーションを書いたのです。
「質問説得話法」はニール・ラッカムという人が開発したもので、営業用トークのひとつだと考えてください。別名「SPIN」とも呼ばれます。
SPINとは、
Situation Questions(状況質問) Problem Questions(問題質問) Impication Questions(示唆質問) Need-Payoff Questions(解決質問)
の略です。具体的にいうと、次のような順で質問していくのです。
「今、御社はこんな状況にありますね?」(状況を把握する) 「今、お困りのことは何でしょうか?」(問題を特定する) 「そのまま放置すると、どのぐらいの損失が?」(問題の重大性を理解させる) 「その問題を解決するために、この製品はいかがでしょうか?」(問題を解決する) このように、質問だけで一連の営業が完了してしまいました。