自律と成長のための人事制度作り
第12回:等級と役職の関連について

何をどう混同してしまうのか

 では、何をどう混同しているのかというと、まず中小企業の場合に多いのは、社内の格付けで「部長」「課長」といった役職名がついていても組織上の部や課は存在しないなど、職務権限を伴った本来の役職としての認識が薄い場合があるということです。

そもそも、部や課といった組織が実質的にはないような会社では、対外的な格付けの表現として「部長」「課長」と呼んでいることがほとんどです。これは「役職」というより「呼称」ということになります。

その後組織化が必要になり、制度を作ったりしていく中で、それまであまり気にする必要がなかったせいもあり、「等級」「役職」「呼称」が混同されたままの運用になってしまいます。 例えば、等級昇格に伴って「では役職名も変えなければ」というような話が出てきますが、そもそも「等級」「役職」「呼称」の違い自体を、あまり理解していないことが多いようです。

 もう一つは、組織改変が頻繁に行われる場合で、主に中堅規模以上の企業が多いですが、こちらは「等級」「役職」「呼称」のルールはあるものの、そのルールが組織変更の実態に追い付かず、役職任命の原則がどんどんあいまいになっていくような場合です。

役職任命にあたって対象になる等級の範囲が、組織変更が行われるたびに徐々に広がっていく傾向があります。「等級」「役職」「呼称」のそれぞれの違いは理解していて、それなりの関連付けはされてきたものの、組織変更の際に会社側の都合が良いように拡大解釈されていったということが多いようです。

混同することでの弊害

 このように「等級」「役職」「呼称」は、一見似ているようで、それぞれのニュアンスは違います。では、これらを混同してしまうことで、一体どんな弊害があるのでしょうか。

まず、違い自体が理解されていない場合は、組織内での役割認識上の問題が出てきます。
誰が責任者で誰が決めるべきことなのか、誰に報告する必要があるのか、自分ではどこまで判断できるのかなど、組織上の職務権限、指示命令に関する意識が欠如している状況が出てきます。これは、違いが理解できていないから組織的な動きができないという面と、これまで組織的な動きを考える必要がなかったから、そんな違いの意識も不要だったという両面があります。

 もう一つ、ルールはあっても拡大解釈されていく傾向がある場合には、役職任命の恣意的な運用という問題があります。

役職任命のルールがあいまいになっていくと、経営者や一部の役員のさじ加減ひとつで役職が決まってしまう懸念が出てきます。抜擢人事がやりやすくなるなど、前向きにとらえても良い面はあるかもしれませんが、会社にとって都合が良い人間、個人的に気に入った人間に役職を与えるということもできてしまいます。会社にその気がなかったとしても、人選によっては恣意的な運用と取られても仕方がないことは起こり得ます。

等級と役職の関係は、人事制度全体の中ではごく小さな検討テーマにすぎませんが、その扱いによっては、わりと大きな組織運営上の問題につながってしまうことがあります。
しっかりとしたルール作りを行い、混同されないようにしておくことが望ましいでしょう。


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著者:小笠原 隆夫 ユニティ・サポート代表 人事コンサルタント    プロフィール    
中堅システム開発会社にてSE・リーダー職を務めた後、同社の人事部門責任者として人事制度構築、人材採用、組織風土活性化、2度の合併での人事制度統合などの実務を経験。2007年に「ユニティ・サポート」を設立し、IT系企業を中心に、現場感覚を重視しながら、その企業の特性を活かす人事、組織作りのコンサルティングを行っている。
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