人事制度構築を考えるにあたって、つながりが深い活動テーマとして「人材開発」があります。 “人材開発の定義は?”といったとき、 「企業戦略を実現するために必要な人材像を明らかにし、要求される能力を獲得するための戦略を策定した上での人材育成活動」というあたりが模範解答だと思いますが、実際には、職場における人材育成全般を指しているような広い捉え方の場合から、研修そのものを言っているような狭義の場合まで、その認識は企業によって様々です。
この捉え方の違いによって、組織内に“人材開発××”というセクションがあったりなかったり、担当者を置いていたりいなかったりします。人事の一機能として扱われている場合も、独立的に扱われている場合もあります。
そんな企業ごとの様々な認識の中で、「人材開発」の捉え方として圧倒的に多いのは、やはり「社内研修を主管する部署(または担当者)」という位置づけではないでしょうか。どちらかといえば、狭義の捉え方の場合が多いといえるでしょう。
そんな位置づけで見られがちな「人材開発」ですが、本来の定義であれば「その企業の人材要件を定める」「必要な能力を定義する」「育成のための戦略を策定する」など、その企業の「人」に関わる部分をつかさどる中核的な取り組みになります。ここからすれば、「“人事制度”は“人材開発戦略”に基づいて作られるものであり、この戦略がなければ人事制度を作ることはできない」ということになります。
こうやって見てくると、本来の意味での「人材開発」の視点は、その組織の有無や、担当者の有無にかかわらず、また自社における人材開発の捉え方の内容にかかわらず、人事制度作りにおいては必須要件ということになります。このように「人事制度」と「人材開発」は、実は切っても切れない関係ということなのです。