自律と成長のための人事制度作り
第3回:検討チームが見落としがちなこと

なぜ後回しになりがちなのか?

そもそも人事制度は全社戦略とつながっていて、企業では基幹の仕組みです。経営的視点を持ちながら制度検討を進めることが基本になり、経営陣との意思疎通が必須になります。

一方で、人事制度はすべての社員に何らかの形で関係するものです。中には興味がないという社員もいますが、多くの社員はどんな制度になっていくのか、その成り行きには関心を持っています。実際に表立った反応は見えないことが多いですが、これは社員の立場では全体の状況もわからないし、特に意見を言う場もないので反応のしようが無いという面があります。

こういう状況の中で、検討チームでは制度内容や経営陣との関係には強く意識を持つものの、あまり反応がないように見える社員たちには、“経過を知らせよう”、“意見を聞こう”という意識が働きづらくなります。
ただ社員からすれば、意見を聞かれることもなく、何がどうなっているかもわからないということでは、制度作りが一部の人間だけで恣意的に進められていると捉えられ、いざ発表された段階で、様々な意見や批判が出たり、場合によっては不満爆発なんていうこともあります。

やはり人事制度を実際に運用するのは現場の社員です。こちらに向けても十分な目配りをすることが必要でしょう。

途中経過で情報発信する難しさ

「検討過程での情報発信、広報」は、大切だとは言っても実際にやろうとするとなかなか難しいものです。一番の問題は「確定していないことをどこまで見せるかの判断が難しい」ということです。議論の途中ではなかなか表に出しづらいこともありますし、確定したかしないかわからないような流動的な部分が付きまといます。開示することで反発を受けそうな内容もあり得るでしょう。

こういう状態にあると、「情報開示を先送りする」「よけいなことは言わない」「決まってから伝えれば良い」という考え方になりがちで、結果として途中経過での情報発信はほとんど行われなくなってしまいます。これはあまり好ましいことではありません。

では具体的にどんな情報発信すればよいかですが、これは残念ながら一概には言い切れません。私の経験でも「具体例に出しすぎたため、かえって誤解された」「発表内容が何度も変わり、不信感を助長した」などということがありました。こんなことがあると、情報発信にはよけい慎重になってしまいますが、私が最も大事と考えるのは、“社員に向けて伝える活動そのもの”です。いろいろな会社での様子を見ていると、どちらかといえば、伝える内容よりも伝え方や頻度、誰が言うかといったことの方が大切と見られているように思います。“隠そうとしていないか”“駆け引きをしていないか”“真面目に伝える気があるのか” といった取り組み姿勢が見られている部分もあります。

こんなことから、内容は盛り沢山でなくても重複があっても良く、発信方法もかわら版、社内メルマガ、定例会などといった形で、定期的な情報提供を行っていくことが良いと思います。情報を制御することでなく、どうやって知らせればより理解が深まるかという「知らせ方」を意識して頂き、何よりも「誠意を持って伝えること」が大事だと思います。

    

意見を聴くとともに、フィードバックが大事

もう一つの「社員からの意見聴取」ですが、こちらは途中経過の情報発信に比べれば、それなりに取り組んでいるところも多いと思います。実際に行うにあたって、聞く内容、実施方法、対象者などは、状況に応じて適宜判断すれば良いでしょう。
方法としては、アンケート、インタビュー、個別か集団か、直接か間接かなど、いろいろ考えられますが、例えば多くの意見が欲しいならアンケート、細かく聞きたいなら個別インタビュー、口下手が多ければ集団の意見交換会など、状況に応じて使い分ければよいと思います。

ここで一番大事なのは、意見聴取した内容をきちんと開示し、どう扱うかの見解や疑問に対する答えをきちんと提示することです。とりあえず意見は聞いたけど、それがいったいどう扱われたかがわからないという状態は、社員にとっては「無視されたこと」と同じで、これが一番信用を失います。結果をきちんとフィードバックするということが大事で、これは前述の情報発信の一部ともいえます。

人事制度の検討では、途中の進め方が後々影響してくるケースが多々あります。今回取り上げた情報発信や社員の意見聴取などといった事柄も、全社が一体になって取り組むムード作りの一環になります。ついつい後回しになりがちなことですが、しっかり目を向けて取り組んでいただければと思います。


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著者:小笠原 隆夫 ユニティ・サポート代表 人事コンサルタント    プロフィール    
中堅システム開発会社にてSE・リーダー職を務めた後、同社の人事部門責任者として人事制度構築、人材採用、組織風土活性化、2度の合併での人事制度統合などの実務を経験。2007年に「ユニティ・サポート」を設立し、IT系企業を中心に、現場感覚を重視しながら、その企業の特性を活かす人事、組織作りのコンサルティングを行っている。
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