自律と成長のための人事制度作り
第11回:等級制度の運用の話

【自律と成長のための人事制度作り】 第11回:等級制度の運用の話(小笠原 隆夫)

等級制度の構成は、それによって実際に制度を運用する場面ではそれが大きな違いとなって表れてきます。
例えば年功的な運用が弱い制度にした場合、ランクアップに際しては昇格要件を設定し、それを満たしているかを判定するために、何らかの評価や審査という手続きが必要になってきます。多くの場合はレポートと面談、中には適性テストのようなものを組み合わせる形になると思います。
この審査の過程を通じて、在籍等級と担っている職務との適合性や適格性を測ったり、本人の意識づけを行うなど、動機づけする上では良い機会になりますが、審査期間を要しますし、審査に関わる人の時間や労力など、制度運用の負荷は高くなります。

制度の運用負荷も考慮した設計を

これは実施対象の人数にもよりますが、比較的単純なレポートと面接審査を行おうとするだけでも、その審査期間は最低1~1カ月半はかかるでしょう。実施時期としても年度末にかかる可能性が高く、いろいろな業務が重複する時期だと思われるので、さらに運用負荷は増すことが考えられます。他にも、候補者選定の指示やスケジュール調整といった、現場とのやり取りが必要な手続きには、思いのほか時間がかかります。

逆に年功的な運用が強い制度であれば、毎年一定のランクアップを基本にするので、毎年少しずつ進歩している実感を持たせることができ、制度の運用負荷もそれほどではありません。そのかわり、昇格、昇級のイベントとしての要素は弱まり、向上心の低下やマンネリに陥る恐れがあります。機械的に昇格させる意識が強くなることで、在籍等級で本来求められる役割と、実際に担っている仕事が乖離していく恐れもあります。

実際にこの昇格審査のような制度設計を行う中では、等級ごとの要件をどうするか、それに合致しているかを確認する方法をどうするかといった、制度のあるべき姿の方に意識が傾きがちですが、この制度を実際に運用するとどんな作業が発生してどの程度の工数が必要なのかという点は、制度設計を行う上では非常に重要な要素です。

これはある企業での事例ですが、できる限り年功的要素を排除した実力主義の制度にしたいということで、等級制度でも相応の審査基準や手続きを定めた仕組みとしましたが、実際に運用してみると想定以上に審査対象者が多く、制度の主旨通りの運用ができずに形骸化し、年功的な制度と変わらないか、ヘタをすればそれよりも悪いというような状況に陥ってしまいました。

これは人事制度構築全体にも言える事ですが、制度の理念や構成、仕組みとともに、やはり制度の運用負荷や、自社の対応力といった部分も考慮しておいた方が良いでしょう。

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