自律と成長のための人事制度作り
第8回:人事制度のコンセプト作り

【自律と成長のための人事制度作り】 第8回:人事制度のコンセプト作り(小笠原 隆夫)

本連載の第6回では、人事制度は企業の「人材開発戦略」の一部を担う仕組みであり、その前提や基本的な考え方となる“コンセプト”が重要であることをお伝えしました。
今回は、その“人事制度のコンセプト”とは、一体どんなことを考えればよいのかということを、少しご説明しようと思います。

コンセプトとは何を指すか

コンセプトという言葉の意味を調べると、本来は「概念」「思想」を表す言葉で、一般的に用いられるのは、「全体を貫く基本的な概念」「基本理念」などを表すことが多いようです。非常に幅が広く、なおかつ抽象的なものも含んだ内容になります。

このあたりを人事制度に当てはめると、一言でいえば「その人事制度によって、いったい何を実現したいのか」ということになります。

会社の制度というと、会社の成長、業績向上、競争力強化、組織の強化といった、会社からの視点がどうしても多くなりますが、人事制度の場合は、ここに自己成長、技術やスキルの向上、生活の安定、仕事を通じた幸福感など、社員個人の視点に関わる部分が必ずついて回ります。

社員、組織、会社の事業そのものの成長に人事制度がどのようにつながり、その成長を実現するにはどんな骨格の制度にするのか、社員間にどんなマインドを醸成し、どんな行動につなげるのか、望ましい社員感情や行動はどんなものなのかなど、人と組織にまつわる抽象的な概念や理念を言語化、文書化して表現をするのが“人事制度のコンセプト”ということになります。

コンセプトを定める目的は「制度が本質から外れないため」

人事制度を実際に運用し始めると、様々な問題が出てきます。制度に問題があって意図した効果が得られなかったり、運用で不適切な取り扱いがされていたりということがあり、制度と運用の両面から常に見直しを継続していく必要があります。

そうやってブラッシュアップをしていく中では、仮に当事者にはそんなつもりがなかったとしても、ともすればその場しのぎの対応になってしまっていたり、本来意図していたことから外れてしまったりということがあります。また、そのやり方が、果たして望ましいのか望ましくないのかといった、グレーゾーンのようなケースが出てきます。

こんな時に重要になってくるのが、コンセプトの存在です。例えば「育成重視」というコンセプトがありながら、ただ結果だけを評価して、プロセスの説明や意見交換を省くような運用になっていたとすれば、これはコンセプトに反していると言わざるを得ません。

よく「木を見て森を見ず」といわれますが、制度の手直しや運用改善が「木」の部分だとすれば、制度のコンセプトは「森」の部分に当たります。コンセプトがなかったり、あいまいだったりということでは、「森」の全体像がわからないということになってしまいます。

このように、“人事制度のコンセプト”は、「迷った時の道しるべ」ということができます。「木を見て森を見ず」にならないように、社内でしっかりと共有できるものを作っておくことが必要です。

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